会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2019年12月発行 第307号 DDKだより

金融・経営相談:どうなる金融機関の融資先への支援

Q.小売業を中心に、倒産が増加していると聞きます。その上、消費税増税後の影響が懸念されています。金融機関の中小融資先への支援はどう進むのでしょうか?

今月の相談員
中小企業診断士
中小企業組合士 伊藤 勝

A.民間調査機関の最近のレポートによると、2019年度上半期の小売業者の倒産が、988件を記録、前年同期比7%増加した。小売業は近時、インターネット通販を運営する業者との競争激化、インバウンド需要が、中国経済の減速や日韓問題などから減少傾向にあり、厳しい状況が続く。加えて、消費税が10%になり、増税を機に廃業を検討する業者が増加し、倒産に至るケースもある。そのため、金融機関も警戒感を高めており、融資先への評価を見直す動きがあり、企業からは融資姿勢の変化などを懸念する声があがっていると、報じています。
 「DDKだより304号(19.9月)」でも金融行政が変わる問題を取り上げましたが、金融機関の経営環境の悪化も取りざたされる下、融資先へのスタンスが今後どのように変わるのか。銀行員向け用専門誌は、金融機関の今後の既存融資先の選別方向を以下のように示唆しています。
 (1)自助努力により経営改善が見込まれる先、(2)抜本的な事業再生や事業転換により生き残りを図る先、(3)事業の持続的可能性が見込めず事実上の廃業を進める先、の3つに大きく分類した上で、経営改善が見込まれる先以外は、「出口戦略」として1.事業再生(自主再建・私的整理・再建型法的整理など)、2.転業・事業転換、3.組織再編・外部への事業継承、4.廃業・清算に選別して作業をすすめる方向性を打ち出しています。
 しかし、各融資先の経営課題への対応は、金融機関独自では量的にも質的にも限界があり、短期間では実行が困難と思われます。そのため、中小企業庁は、中小企業再生支援協議会など外部専門機関や外部専門家との連携を勧めています。  
 一方、当面の問題として中小企業庁は、金融機関に対し、「中小企業の資金繰りに支障が生じないよう、その実情に応じてきめ細かく対応すること」を求めています。
 とりわけ、企業存続のため借入金の返済条件緩和措置が続いている企業は、資金繰り逼迫による倒産は絶対に回避しながら「経営改善・体質強化」をはかる努力が大事です。