会報誌(DDKだより)
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2020年04月発行 第311号 DDKだより
巻頭:厚顔無恥
青木 正
広辞苑をひも解くと、「あに芳杜をして顔を厚くし、薜茘をして恥ずる無からしむべけんや」 他人に対する態度が厚かましく恥を知らない様子、とある。昨今の通常国会予算審議での安倍首相の答弁を見ていて、万事この言葉に尽きると感じたのは私だけだろうか。
遡ればかつて厚顔無恥と評された宰相は、ウィンストン・チャーチル英国首相、吉田 茂首相、岸 信介首相、ウラジーミル・プーチン大統領、ドナルド・トランプ大統領など、人の評価は分かれるものの皆いずれも大物個性派ぞろい。
2006年に戦後最年少、初の戦後生まれの首相として鳴り物入りで発足した安倍第1次内閣・第1次改造内閣は、相次ぐ閣僚の辞任ドミノを引き金に参議院選挙の敗北で体調不良をきたし、わずか1年の短命で終了。その後しばらくして自由民主党は下野したが、あとを引き継いだ民主党政権の度重なる失策が国民の反感を買い、5年後の2012年12月に再び首相の座に返り咲いたのは記憶に新しい。
安倍首相は野党暮らしを含むその5年間以降、ひと回りもふた回りも、良くも悪くもたくましく、そしてしたたかになった。外ではロシア・中国・米国など世界の並み居る大国の実力派トップと互角に渡り合った自信と、内においては自身に共鳴してくれる気心の知れた政治家を厚く上手に登用し、官僚人事ではキャリアの心情というものを絶妙なまでに見透かした配置や論功行賞、気が付いてみれば首相通算在職日数は歴代最長を更新。しかし’好事魔多し’とは浮世の常、いまオリンピックを目前にして日本は、いや世界は未知の感染症という難問に直面してしまった。
はてさて、この危機をどうやって乗り切るか首相のリーダーシップの真価が問われるところである。この際与党も野党もない、モリ・カケ・サクラ等々も一時どこかに置いておいて、呉越同舟、ワンチームになって解決にあたるのが最優先課題であろう。思い起こせば2011年3月11日に日本は未曾有の危機に直面した。時の民主党政権が経験した危機管理の失敗例と成功例をも充分に参考にしながら、内閣・省庁・国会・医療機関そして国民も一致結束して問題の克服に注力するしかない。
なんびとから、あたら厚顔無恥と言われようと、いつの世も政権の評価はのちに歴史が答えを出してくれる。安倍首相には、この問題の解決によってモリ・カケ・サクラ等々の汚名を少しでも挽回すべく、そして誰もが認めるようなリーダーシップを期待したい。