会報誌(DDKだより)

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2020年06月発行 第313号 DDKだより

人事労務相談:代休と振替休日について

Q.休日に勤務させても替わりに平日に代休を与えれば休日割増手当をつけなくてもいいと聞きましたが問題ないでしょうか。

今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁

A.振替休日と代休を混同することから発生する問題です。社員にとって、休日に出勤したら休日割増手当が支払われ、かつ平日に休めるなら、こんなに嬉しいことはありません。しかし、会社としては、他に休みを与えるのだから、休日割増手当をつけないでバランスをとりたいと考えます。ここが、会社と社員の食い違いです。
 一般に、振替休日と代休は全くことなる制度です。振替休日とは、所定の休日と定められた日に出勤し、その交換として他の労働日を休日とする制度です。つまり、休日と平日を入れ替えるものです。この休日労働は、当該週の法定労働時間(40時間)を超えない限り、平日の労働になり、休日割増手当は発生しません。他方、代休とは、所定の休日に出勤した場合、その代償措置(休日労働の慰労)として、平日の労働日の労働義務を免除するものであり、代休があるからと言って、「休日労働」がなくなるものではありません(昭23年4月19日基収1397号、昭63年3月14日基発150号参照)。
 事案が前述の振替休日のことであれば、予定の振替日に休めてさえいれば休日出勤手当の問題は発生しません。しかし、「代休」(慰労)の意味ならば、そもそも代償措置としての休日ですから、休日割増手当の問題が発生します。規定の仕方によりますが、最大の場合は、休日出勤日の所定内1日分プラス割増手当(2割5分ないしは3割5分)の給与が発生するとも考えられます。他方、休日出勤日と代休日が月給制で同一締め切り期間内であれば、最も少なめに見積もって、休日出勤日の割増手当分(2割5分ないしは3割5分)のみ会社は支払えばいいという考え方もあります。その場合、代休日の所定内1日分の給与については、労働義務のない不就労日と考え、無給と明記することになります。事案では、このように振替休日を代休と混同して割増手当が不要と考えたに過ぎません。
 ただし、前述のように、月給制の元では、代休日の所定内給与分はすでに、休日出勤で支払い済みと考えることもできますから、会社として、あくまでも振替休日でなく、代休制度として維持するのであれば、休日労働に対して休日割増手当を支払い、別の日に無給の代休をとってもらう制度もまた、社員にとって魅力的です。いずれにしても、疑義のないよう就業規則等に明記して下さい。