会報誌(DDKだより)

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2020年11月発行 第318号 DDKだより

巻頭:DXで豊かになれる?


齋藤 正広

 最近、新聞やネットでよく目にする「DX」という言葉をご存じでしょうか? 私の世代では「デラックス」の略語です。(笑) 今は「デジタルトランスフォーメーション」を意味します。
 2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と提唱したのが始まりと言われています。
 その後、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる巨大IT企業が躍進し、世界のあらゆる分野のビジネスモデルを変えてきました。
 日本では、2018年に経済産業省が「DX推進のためのガイドライン」を発表し、最近では、新型コロナウイルス感染拡大に伴うテレワークや巣ごもり消費の拡大に伴って、ITの活用による新たな仕事スタイル、事業展開が注目を集めています。菅新内閣も「デジタル庁」の創設を目玉政策に掲げるなど、今や「デジタル」が時の言葉になりつつあります。
 当社の顧問先でも、教室参加型のセミナー事業をweb型セミナーに切り替えたところ、全国から受講生が集まり会員が2倍になった事例、絵本の出版社がSNSや動画配信を活用することで、読者、著者、編集者、書店がつながり、ファンが増加した事例など、従来と違う方法でのアプローチにより業績向上に結びつけている会社がでてきています。
 一方で、東京商工リサーチが実施したアンケートでは、コロナ禍が長引いた場合、廃業を検討する可能性があると答えた中小企業は8.8%にも及びました。企業数から単純計算すると31万社超となり、現実化すれば多くの人が職を失うことになる深刻な事態です。
 また、政府は10月に「成長戦略会議」を新たに立ち上げました。メンバーには菅首相のブレーンであるデービッド・アトキンソン氏が入りました。氏は日本の中小企業数が多すぎることが生産性の低さの原因であると主張し、中小企業の再編、淘汰を提案しています。労働者が流動化し、より生産性の高い企業で働くようになれば、経済が成長するという理論です。
 しかし、現実には非正規雇用がますます増加し、格差が大きくなるのではないかという懸念があります。特にIT活用による生産性向上は、雇用の創出面での効果は弱いと言わざるをえません。皮肉にもGAFAが誕生したアメリカがそれを証明しています。
 DXが当初の目論見通り、私たちの生活を良い方向に変化させるかどうかは、私たちがどのような社会を目指すのかにかかっていると言えそうです。