会報誌(DDKだより)

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2020年12月発行 第319号 DDKだより

巻頭:「ジョブ型雇用」をチャンスに


石田 仁

 閣議決定された2020年の骨太方針(7月17日)は、テレワークの定着・加速とともに、ジョブ型正社員の更なる普及・促進に向け、雇用ルールの明確化や支援に取り組むとしています。同時に成果型の弾力的な労働時間管理や処遇ができる裁量労働制の整備も検討。従来の日本型雇用から転換をすすめ、より効率的で成果が的確に評価されるような働き方への改革、ジョブ型雇用が推奨されています。マスコミでは、重要なことは、何時間働いたかではなく、何をやったのか、どんな成果を上げたのかのジョブ型雇用と喧伝されています。
 人の経験や能力に値段がつくのではなく、ジョブ(仕事の成果)に値段がつく雇用です。フリーランスや請負的な「働き方改革」への変貌。デフレ下、人件費の伸びが少なく、非正規社員が少しずつその待遇差を縮める。今、こぞって正社員にジョブ型が待望されています。
 これまで、成果主義が、それほど中小企業に広まらなかったのは、?経営者の良心的経営で基本給は年功要素が強く、貢献度に応じて、諸手当や賞与でバランスを取っていること。?能力や成果に重点を置く処遇には賛成だが、自社に合った仕組みを作る手間暇が十分でないこと。?仕事を分かち合い、皆で伸縮して緊急時を凌いできたことにあります。総じて中小企業経営者は社員が能力を伸ばし、会社に貢献し、幸せになって欲しいとの思いが強い。
 私は、経験から中小企業でも、社員の仕事振りを評価し賃金を決定する方がいいと思っています。挑戦しても成果がなければ給料が伸びない成果主義とは違います。社員に何をやって欲しいか、社員は何をやらなくてはいけないのか各人の目当てがわかる仕事一覧(できれば職種別、難易度別)を作ることです。会社が期待する基準です。次に、社長や上司が社員を位置付けます。A君は営業職、「新規開拓はまだできないが、指導を受ければできる程度」として3等級に。A君には営業職3等級レベルの仕事を中心に選択し、上の等級の仕事も盛り込み、その年の具体的仕事の目標を面談で決定。半年後、1年後に評価判定し、達成度合いで昇給や賞与に連動させます。大企業はこれを職能資格制度(年功的と批判されている)と称し、私は中小企業向けに面談制度と呼んでいます。
 私たち、中小企業はどう対処するか。コロナ禍でもデジタル化やジョブ型雇用の流行に振り回されず、社員の能力活用を目指すこと。賃金は従来の総合勘案型(どんぶり勘定)に頼らず、簡易な職種別の仕事一覧を作成し、各人の達成度で決めることです。少なくとも年に一度は面談で評価し、次年度の目標を立てます。当然、育成の視点が必要です。手間のかかる仕事一覧表が作れなくても、上司と部下は必ず面談し、その年の各人の具体的な仕事の目当てを明らかにすることが肝です。少し遠回りでも、この積み重ねがイキイキと働ける処遇の礎になると思う。