会報誌(DDKだより)

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2021年01月発行 第320号 DDKだより

金融・経営相談:中小企業向け「資本性劣後ローン」とは―ポストコロナ対策―

Q.新型コロナ感染症による影響で、資金繰り困窮、危機対応のための借入金でなんとか凌いでいますが、コロナ終息後が不安です。そんな折、「資本性劣後ローン」のことを耳にしました。本ローンはどのようなものか、概要を教示ください。

今月の相談員
中小企業診断士
中小企業組合士 伊藤 勝

A.新型コロナ感染症(以下、「コロナ」という)の影響を受けている中小企業に対して資本性資金を供給することで、V字回復に向けた基盤強化を図るために国が支援に力を入れます。
 昨年8月から本ローンの取り扱いを開始した商工中金の「新型コロナ危機対応資本性劣後ローン」と日本公庫(日本政策金融公庫)の「新型コロナ対策資本性劣後ローン」の新制度について、以下概要をご紹介します。
1.本ローンの特徴:コロナの影響による業況悪化に伴い資本の毀損(収益減少による自己資本減少)が懸念される中、本来の収益力を回復するまで、資本増強のため、「資本性劣後ローン(資本的な性格をもった劣後ローン)」によって、事業の成長・継続を支援するものです。活用のメリットは、(1)業績連動金利により利息負担が抑えられる。(2)期日一括弁済により返済負担が軽減されるので、資金繰り安定化できる。(3)本ローンは、法的倒産時の全ての債務の返済順位の劣後性(他の特定の債務又は一般債務より弁済が後になる)により、金融機関からは、資本とみなされることで、融資が受けやすくなります。
2.主な貸付要件(中堅企業向けは別建て制度有り)
(1)対象者:<1>事業計画を策定し、民間金融機関等による協調支援を受けられる事業者。<2>再生支援協議会の関与の下で事業再生を行う事業者等。
(2)貸付限度:<1>商工中金は、7.2億円 <2>日本公庫は、「中小事業」7.2億円、「国民事業」7,200万円
(3)貸付期間・返済条件:商工中金・日本公庫共、5年1ヶ月、10年、20年。(全て期限一括償還)
(4)貸付利率:商工中金・日本公庫共、当初3年間一律金利0.5%(日本公庫「国民事業」は1.05%)、4年目以降は直近決算の業績(税引後当期純利益額)に応じて変動します。(詳細は略)
(5)無担保、無保証人です。
 コロナ禍によって、一時的な赤字に陥り、自己資本が毀損した場合の手当としてうってつけと思われます。コロナ禍が終息しても、直ぐに業績向上するかは不透明です。その時に備え、資金繰りが安定するだけでなく、対外的な信用補完にもなり、事業の安定化につながる本ローンの検討も選択肢です。