会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2021年02月発行 第321号 DDKだより
人事労務相談:副業・兼業における管理モデルとは
Q.当社では就業規則で副業・兼業を認めることにしました。法令上、労働時間は副業先と通算して管理することになっていますが、昨年9月に厚労省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定され、簡便な労働時間管理の方法として「管理モデル」が導入されたと聞きました。その内容をわかりやすく教えて下さい。今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁
A.副業・兼業先で働く日数が多い場合や自社(A)と副業先(B)の双方で所定外労働がある場合においては、労働時間の申告等や労働時間の通算管理において労使双方の手続きが煩雑になることが予想されます。管理モデルは、そのような場合において労使双方の手続き上の負荷を軽くし、労働基準法の定める最低労働条件を遵守することが可能となる方法です
(「副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第38条第1項の解釈等について」令和2年9月1日、基発0901第3号)。ただし、副業先がフリーランスや労基法の労働時間規制が適用されない管理職等の場合には労働時間の通算は適用されないので管理モデルの適用はありません。
具体的には、副業の開始前と開始後に手続きが分かれます。
まず、開始前には、(A)社における法定外労働時間+(B)社における労働時間(所定+所定外労働)が時間外労働の上限規制である単月100時間未満かつ複数月平均80時間以内となる範囲で(A)社と(B)社における労働時間の上限をそれぞれに設定します。
次に、開始後は、それぞれの上限の範囲内で労働させることが可能となります。
その結果、(A)社は自らの会社における法定外労働時間の労働について、(B)社は自らの会社における労働時間の労働について、それぞれ自らの会社における36協定の延長時間の範囲内として割増賃金を支払うことになります。
メリットは、(A)社、(B)社はお互い各社における社員の実労働時間を把握せずとも労基法を遵守していることになります。しかしデメリットは副業先である(B)社にあります。自社で働く時間の全部(所定時間も含め)が割増賃金の対象になることです。(A)社での所定労働時間が短い場合に「管理モデル」を導入すると(B)社は相当なコスト増になってしまいます。後契約の副業先であるが故に、本来は所定労働時間内の勤務でも割増賃金が必要になるからです。
このように、管理モデル方式は先契約の(A)社に有利に働くことになります。
先に契約している貴社が管理モデルを導入するメリットはありますが、副業先が否を示す場合が多くなるのではと言われています。できたばかりの仕組みで、導入にあたっては、慎重に判断されることをお勧めします。厚労省のガイドラインに、導入の解説と手順に添った管理モデル導入の様式例が示されています。実施にあたりぜひご参照下さい。