会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2021年06月発行 第325号 DDKだより

人事労務相談:テレワークにおける労働時間の把握について

Q.当社は、業務に応じてテレワークを実施していますが、社員から、長時間労働になっているとの声が寄せられ、対策が必要と考えています。今般、テレワークのガイドラインが改定されましたが、労働時間の把握について、基本的な考え方を教えて下さい。

今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁

A.テレワークの方法は様々ですが、上司や部下が離れた場所で仕事をすることから労働時間の現認や記録が難しい点が従来からも指摘されていました。最近の調査からも時間外の不払いや長時間労働が多いとのデータがあります。
 テレワークにおける労働時間の把握は、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(厚労省、令和3年3月25日、以下「改定テレワークガイドライン」)の他に、原則となる「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚労省、平成29年1 月20日、以下「適正把握ガイドライン」)を踏まえることが必要です。
 原則となる適正把握ガイドラインは、労働時間の把握につき、まず使用者が現認し、タイムカード、パソコン等の客観的な記録を残すことを求めています。しかし、テレワークは、使用者が自ら現認することができないため、改定テレワークガイドラインは、客観的な記録による方法としてパソコン等の使用時間の記録を基礎に、始業・終業の時刻を確認することを挙げています。実務的に、(1)社員のテレワークに使用する情報通信機器の使用時間の記録等から労働時間を把握すること、 (2)サテライトオフィスを使用する場合には、当該オフィスの入退場の記録等により労働時間を把握することと具体例を示しています。
 情報通信機器の記録だけでは社員の始業・終業の時刻を反映できない場合には、社員の自己申告により労働時間を把握することになります。改定テレワークガイドラインでは、使用者に次の措置等を講ずるよう示しています。(1)社員に対して労働時間の実態を記録し、適正に自己申告を行う等についての十分な説明をし、実際に労働時間を管理する者に対しても、自己申告制の適正な運用等についての十分な説明をする。それでも、(2)社員の自己申告により把握した労働時間が、実際の労働時間と合致しているか否かについて、パソコンの使用状況等客観的な事実と、自己申告された始業・終業時刻との間に著しい乖離がある場合には所要の労働時間の補正を求めています。
 例として申告された時間以外の時間にメールが送信され、申告された始業・終業時刻外に長時間パソコンの起動記録があるような場合です。また、(3)自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設ける等、社員による労働時間の適正な申告を阻害する措置を設けてはならないので注意が必要です。
 ご質問の長時間労働の実態がある場合には、パソコン等による客観的な記録が十分でないと考えられますから、社員による申告が必要となるでしょう。改定テレワークガイドラインは、この自己申告を簡便に把握する方法として、メール等で報告させることも一例として挙げています。ぜひ、参考にして下さい。