会報誌(DDKだより)
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2021年08月発行 第327号 DDKだより
巻頭:全国一律最低賃金1500円を考える
沼田 道孝
埼玉同友会事務局(埼玉中小企業家同友会)から埼労連(埼玉県労働組合連合会)の「最低賃金引上げ」学習会のお手伝いを頼まれました。気軽に引受けたものの「最賃引上げのためにどのような政策が中小企業に必要か」の視点が求められました。テーマは「最低賃金の格差をなくして地域を元気に」です。メインの講師は“自民党最低賃金一元化推進議員連盟”の務台俊介衆議院議員。私は15分の発言時間を頂きました。
現在、労働組合や政党から“最低賃金1500円を目指して”の政策提案が出されています。労働組合は、「来年の通常国会で全国一律最賃の実現を目指し、数年で1500円の実現を図りたい」との方針。務台氏は、地域間格差を解消し、地域に青年を戻し、地域の経済活性化に全国一律最賃が是非必要と報告し、菅総理も骨太方針の中で全国一律には乗り気と強調された。
最賃1500円は、月給24万、年収312万(賞与1か月)の水準。この月給は、上場企業を中心にした2020年の初任給大卒の206,333円、大学院卒の231,945円より高い(産労研データ)。年収に至っては、非正規労働者の年収平均1,746千円をはるかに超えます(国税庁の民間給与実態調査2019年)。導入には、現状の賃金水準を根本から見直す必要があります。
私は、拙速な引き上げについては中小企業への影響が大きく、計画的な引き上げが必要と考えています。そのうえで三つの提案をしました。第一に、企業間取引の最賃に関わる単価調整が対等な関係ができるような相談・調整システムをすべての地方自治体に設置すること。第二に、事業者・企業に雇用者としての責任を自覚するための研修制度の義務付け。さらに、ディーセントワーク、働きがい、生きがいを生み出せる企業づくりへの支援が必要であること。第三に、税・社会保険等の配偶者控除の検討、税制の見直し、また社会保険料の軽減等の必要性を指摘しました。最後に1500円を実現する財源の支援制度として、消費税の還付を提案しました。
付加価値課税の消費税は人件費に課税といっても過言ではないからです。中小企業家のインセンティブとしても効果的です。もちろん、免税事業者や赤字企業には給付型の支援が必要ですが、計画的に目標づくりができるような環境を作らなければ、とても実現できないと考えています。
政府や国会に計画性のある方針が果たしてできるのだろうか。注目したい。