会報誌(DDKだより)

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2021年09月発行 第328号 DDKだより

金融・経営相談:ファクタリングサービス利用にあたっての留意点

Q.某ファクタリング会社が、「国が推奨する資金調達方法ファクタリング」との謳い文句で国が普及促進しているかのように宣伝をしていますが、企業の資金調達として安心でしょうか?利用する場合の留意点を教示ください。

今月の相談員
中小企業診断士
中小企業組合士 伊藤 勝

A.中小企業庁は、中小企業者が不動産担保に過度に依存せずに資金調達できるよう、「売掛金債権担保融資保証制度」を創設し、売掛金債権を担保にした融資の利用促進を発信していますが、ファクタリングを積極的に推奨しているわけではありません。逆に、金融庁からは、「高額な手数料によるファクタリングにより、かえって資金繰りが悪化したり、多重債務に陥る危険性がある」と注意喚起の通達を出しているくらいです。
 新型コロナ感染症による影響を受けている事業者等がファクタリングを安易に利用することには注意が必要です。
 ファクタリングとは、企業が取引先から売上代金を受け取る権利(売掛債権)を額面より安く譲渡する代わりに、入金期日の前に現金を受け取ることができる仕組みのこと。法的には、債権の売買(債権譲渡)契約です。ファクタリング会社は貸金業ではないので許認可不要で、利息制限法等の適用もなく銀行系からノンバンク系まで様々な企業が参入しています。
 ファクタリング契約方法(*)は「2者間契約」と「3者間契約」があります。
 「2者間契約ファクタリングサービス」を利用する場合のメリットは、(1)売掛先の承諾は不要。(2)一般融資にくらべ、スピーディー審査で手続きが比較的簡単(3)担保や保証人不要などですが、一方でデメリットは、(1)高額な手数料が発生(売掛先企業の信用度によって、手数料が設定され、売掛金の6%~30%が相場といわれている)する。(2)利用会社の信用度も審査されるなどです。
 注意が必要なのは、高額な手数料問題です。一般融資による借入利息(年率)に換算してみましょう。仮に受取り期日まで1ヶ月間の売掛金の10%を手数料として差引かれるとすると、年率換算120%となります。貸金業者であれば違法となる莫大な額です。銀行融資がされるまでのつなぎ資金としてやむを得ず利用するならまだしも、恒常化するのは利益大幅減少や資金繰り悪化につながり危険です。慎重に検討が肝要です。ファクタリングでなく国の進める売掛金債権担保融資の利用も選択肢です。

(*)ファクタリングサービスの「2つの契約方法」
 (<1>ファクタリング会社、<2>サービス利用会社、<3>売掛先)
 (1)「2者間ファクタリング」の仕組み
    契約主体:<1>と<2>
    売掛代金の最終決済:<3>から期日に入金された<2>は、即<1>に振込む。
 (2)「3者間ファクタリング」の仕組み
    契約主体:<1>と<2>と<3>
    売掛代金の最終決済:支払期日に<3>から直接<1>に振込まれる。