会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2021年10月発行 第329号 DDKだより
人事労務相談:同一労働同一賃金と待遇説明書について
Q.本年から中小企業にパート・有期労働法が施行され、パートに対して待遇説明書が必要になると聞きました。その留意点を教えて下さい。今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁
A.働き方改革では、同一企業内において、正社員と非正規社員の間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されています(パート・有期雇用労働法)。具体的には、(1)職務内容、(2)職務内容・配置の変更範囲(簡潔に昇進や転勤を含めた人材活用の仕組み等)、(3)その他の事情(成果、能力、経験等)に照らし、不合理な待遇差を禁じています(「均衡待遇規定」同法第8条)。ここでは、不合理でない待遇差は肯定されます。もう一つは、「均等待遇規定」(同法第9条)。この場合、(1)職務内容、(2)職務内容・配置の変更範囲が双方同じ場合ならば、一切、待遇差は禁じられます。同じ仕事で同じ配置の変更範囲ならば待遇は同じでなければならないことを規定しています。実務的には、ほとんどが前者の「均衡待遇規定」が適用されますが、どのような待遇差が不合理にあたるかケースバイケースで、判例の集積も十分ではありません。そこで、厚労省は、待遇ごとに判断することが容易なように「同一労働同一賃金のガイドライン」(指針)で、原則となる考え方及び具体例を示しています。すべてを網羅しているわけではなく、ガイドラインで示されないものについては、労使で個別具体的に判断していきます。以上が同一労働同一賃金の原則です。
事業主は待遇差の説明義務を課されています(パート・有期雇用労働法第14条)。立て付けは労働者が求めた場合に説明できれば良いのですが、文書としての「待遇説明書」を用意しておくことをお奨めします。この待遇説明書の記入ポイントは以下の通りです。
どの正社員と比較するか。正社員の類型が一つしかなければそれとの比較。無期のフルタイム労働者や地域限定の正社員等種類があればそのすべての類型との比較が必要になります。次に、待遇差の内容については、比較実証できるよう賃金表、手当一覧等が参考資料となります。最後に、その待遇差の理由です。これについては、前段の均衡規定の(1)職務内容、(2)人材活用の仕組み、(3)その他の事情のうち、個々の待遇の性質・目的に照らして適切と認められるものに基づいて、待遇差を設けている理由を説明することになります。
例えば、基本給についての待遇差が当該パートは時給1,100円、比較対象の正社員は、1,300~1,500円(時給換算)だった。その理由につき、正社員はパートと異なり(1)クレーム対応、予算管理等異なる職務がある、(2)土日の休日勤務がある、(3)昇進等配置の変更や転勤もあるのでこれ等を踏まえた支給額としていること。次に、賞与については、いずれも貢献度に応じて支給。当該パート職員については、他のパート職員と同様に上限10万円として一律支給。正社員については人事考課により基本給の1~2カ月分を支給。待遇差の理由は、同じく上記3つの理由である。このように、待遇差を説明する文書が求められることを認識する必要があります。もちろん、待遇差があり、不合理を説明できない時には、「6カ月後にはパート社員にも人事考課を導入します」のような対策を添える必要があるでしょう。実際の待遇説明書モデルについては厚労省が記載例を作成していますので参照願います。