会報誌(DDKだより)

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2021年11月発行 第330号 DDKだより

年金相談:老齢年金の繰り上げとは

Q.昭和34年5月生まれの男性、現在62歳。私の年金は64歳から支給開始されるそうですが、早く受給したいです。繰り上げについて、教えてください。

今月の相談員
特定社会保険労務士 服部 雅恵

A.本来の支給開始年齢よりも前に年金受給することを「繰り上げ」といい、減額された年金額を生涯受給することになります。一方、本来の支給開始年齢より遅らせて受給することは繰り下げといい、遅らせた分増額した年金額を生涯受給できます。
 繰り上げは生年月日に応じて、仕組みが変わります。
 相談者の事例では報酬比例部分の受給開始年齢が段階的に引き上げられている状況のため、通常であれば64歳から報酬比例部分を、65歳から老齢基礎年金を受給できます。64歳より前に繰り上げ請求した場合、繰り上げ請求した月から本来の受給開始年齢到達の前月までの月数に対し、1か月につき0.5%減額した年金額を受給することになります。この場合、老齢厚生年金と老齢基礎年金の両方を繰り上げることになり、どちらか一方のみとすることはできません。
 なお、令和4年4月に繰り上げの減額率が0.4%に改正され、減額の幅がゆるくなりますが、昭和37年4月2日以降生まれの方が対象です。すでに62歳の相談者は改正後に繰り上げ請求しても現行の0.5%の減額率ですのでご注意ください。
 繰り上げ請求の際の主な注意点は下記のとおりです。
(1)受給権取得後に障害状態になっても障害基礎年金の受給権を取得できません。
(2)国民年金の寡婦年金の受給権は繰り上げ受給の老齢基礎年金の受給権を取得すると消滅します。
(3)国民年金の任意加入者は繰り上げ請求ができません。繰り上げ請求後に任意加入もできません。
(4)付加年金も合わせて減額されます。
(5)加給年金額の対象者がいる方は65歳から加算されます。

 一度行った繰り上げ請求の取消はできませんので、よく考えて請求されることをお勧めします。