会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2021年12月発行 第331号 DDKだより
金融・経営相談:事業承継時の経営者保証解除に向けた国の支援策
Q.40年間続けた会社を家族に承継したいのですが、既存の借入金を引き継ぐことに難色を示しており、経営者保証を解除できる融資や信用保証制度など国の施策があったら教えてください。今月の相談員
中小企業診断士
中小企業組合士 伊藤 勝
A.中小企業庁の資料によると、2018年度時点の事業承継時の経営者保証徴求割合は、約90%で、事業承継にとって経営者保証が大きな障害となっている。この後継者確保難を解消するため、国として、事業承継時に後継者の経営者保証を可能な限り解除していくため、<1> 政府系機関が関わる融資の無保証化(商工中金の「原則無保証化融資」)の拡大 <2> 一定の条件の下で、経営者保証を不要とする「新たな信用保証制度の創設」の対策を講じています。
その一つに信用保証協会による「経営者保証を不要とする事業承継特別保証制度」が令和2年に創設されましたので、概要をご紹介します。
1.保証対象は、
(1)今後3年以内に事業承継を予定する中小企業法人。
(2)令和2年1月1日から(同7年3月31日まで)事業承継を実施した中小企業法人であって、事業承継日から3年を経過していないこと。
(3)次の4つの要件を満たすこと。
<1> 資産超過であること。(純資産がプラスであること)
<2>EBITDA有利子負債倍率(*1)が10倍以内であること。(企業の返済能力:10年以内に返済可能)
<3> 法人と個人の分離がなされていること。
<4> 返済緩和している借入金がないこと。
2.融資限度額:2億8千万円
3.対象となる資金は、
A 前記保証対象(1)の場合:<1>事業資金として真水資金、<2>個人保証付既存融資の借換え資金。
B 前記保証対象(2)の場合:事業承継前に借入れた個人保証付融資の借換え資金。
4.保証料率:「経営者保証コーディネーター(*2)」による確認を受けた場合軽減されます。
5.融資期間:
<1> 分割返済の場合は10年以内。(据置き期間1年以内)
<2> 一括返済の場合は1年以内です。
6.保証人:不要。
7.融資利率:金融機関所定利率。
8.申込は、取引銀行を経由する必要がありますので、専門家同行の上ご相談ください。
(*1)EBITDA(イービットディーエー)有利子負債倍率=(借入金・社債―現預金)÷(営業利益+減価償却費)⇒EBITDA
(*2)経営者保証コーディネーターとは、
事業継承時の経営者保証解除に向けた支援ができる専門家。(税理士・中小企業診断士など)