会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2022年01月発行 第332号 DDKだより
金融・経営相談:令和3年度税制改正、 電子取引の電子データ保存義務が2年間猶予へ
Q.令和3年度の税制改正で電子帳簿保存法が大きく変わりましたが、令和4年度の税制改正で2年間猶予になると報じられています。税制改正はどのようなプロセスで決まるのでしょうか。今月の相談員
税理士 平石 共子
A.令和3年度の税制改正で、電子帳簿保存法が大きく変わりました。改正前は税務署へ申請すれば電子保存できるという規定でした。改正後は事前申請せずに電子保存ができるようになった一方、電子取引については電子データ保存が義務化されたのです。しかもその実施は令和4年1月1日からというものでした。
改正後の電子保存の方法は次の3つの区分によります。
(1) 電子帳簿等の保存 … 電子的に作成した会計帳簿・書類をデータのまま保存
(2) スキャナ保存 … 紙で受領した書類を画像データで保存
(3) 電子取引 … 電子的に授受した取引情報をデータで保存
※電子取引とは、具体的には電子メールやホームページなどから受領した請求書、領収書などです。
この3区分のうち(1)と(2)については、今まで通り紙保存で問題ありません。ところが、(3)の電子取引については、紙保存ではなく電子保存が義務とされています。
この(3)の電子保存に実際どう対応するか、経理担当者は検討に迫られていたというのが実情です。その矢先12月10日、与党の令和4年度の税制改正大綱が決定され、その中で電子取引の取扱いについて、2年間の猶予措置が盛り込まれたのです。
税制は、税負担のあり方や経済社会の変化に対応できるよう、その仕組みについて不断に見直す必要があり、予算編成作業と並行して毎年進められています。
税制改正大綱は税制改正の方針を示すもので、与党税制調査会が大綱を決定すると、ほぼ同じ大綱を閣議決定し、これを受けて国税については財務省が、地方税については総務省が改正法案を作成し、国会に提出されます。衆議院、参議院の順で審議し、措置法の日切れ法案があるため、基本的には3月31日までに可決成立するという流れです。
令和3年度税制改正の電子帳簿保存法改正理由は、経済社会のデジタル化、経理の電子化による生産性の向上といっていますが、電子取引の電子データ保存の義務化は事務負担の増加となるのは明らかで、現場の実情を見て2年延期になったと考えられます。ただし、今のままではいずれ対応することになっているので注意が必要です。