会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2022年03月発行 第334号 DDKだより

年金相談:老齢年金の繰り下げ申出が75歳まで可能に

Q.会社代表取締役、報酬があるため年金は70歳までの繰り下げの申出をしています。75歳まで繰り下げが延長されたと聞いたため、引き続き繰り下げを希望したいです。注意点はありますか?

今月の相談員
特定社会保険労務士 服部 雅恵

A.一昨年の改正法「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が令和2年6月5日に公布され、様々な改正が順次実施されています。ご質問の現行70歳までの5年間の繰り下げ可能年齢が更に5年延びたこともその一つです。令和4年4月以降は最大10年である75歳まで受給を遅らせることが可能になりました。遅らせる分、年金は増額されますが、その率は現行と変わりなく、1か月遅らせるごとに0.7%の増額です。
 来月4月1日施行のため、昭和27年4月2日以降生まれの方(施行日時点で70歳未満の方)が75歳までの繰り下げ申出ができます。
 66歳から75歳まで、老齢基礎年金・老齢厚生年金のいずれも、またはどちらか一方だけを繰り下げすることもできます。
 ご相談者は厚生年金保険の被保険者であるため、老齢厚生年金部分は在職老齢年金の仕組みにより年金額の調整が入ります。老齢厚生年金の繰り下げの加算対象となる金額は、在職老齢年金の仕組みにより調整をしても支給されるはずだった金額部分のみです。70歳以降は厚生年金保険料の徴収は発生しませんが、被用者として年金額との調整は引き続き残ります。また、繰り下げをし増額された年金額はご自身が受給される場合のみ適用されます。
 ほか、主な注意点は次のとおりです。
〇他の年金制度の受給権が発生した場合は、その年金を受ける権利ができた時点で増額率が固定されます。
〇老齢厚生年金の繰り下げ期間中は加給年金は支給されません。また増額の対象にもなりません。
〇老齢厚生年金の繰り下げは厚生年金基金または企業年金連合会からの年金も合わせて繰下げする必要があります。
〇共済組合等から支給される老齢厚生年金(退職共済年金)がある場合は、日本年金機構から支給される老齢厚生年金と同時に繰下げ請求を行う必要があります。