会報誌(DDKだより)
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2022年09月発行 第340号 DDKだより
巻頭:『朝日新聞政治部』に見る日本の凋落
河原 八洋
顧問弁護士の原和良先生から、知人の元朝日の記者・鮫島浩さんが『朝日新聞政治部』と題する本を出版されたと知らされて、すぐに買い求めた。主な内容は2011年3月の東日本大震災で被災した「福島第一原発」吉田調書をめぐる朝日新聞社内の話である。
鮫島班は吉田所長が亡くなった1年後2013年に、極秘とされた吉田調書を手に入れた。報告を受けた社長や幹部は、この調書を記事にする事で、今年の「新聞協会賞」の受賞間違いなしと褒め称え、その日の内に担当グループ賞を決定し、一斉メールで全社員に伝えた。
鮫島さん達取材班は、職員の9割近い560人が、事故が起きた第一原発ではなく10?も離れた第二原発に避難したのが、命令違反に成るか?どうかの確証が取れていなかったので、不明な点を記事の中で明記する様に主張したが、インパクトが薄まるという理由で、後日掲載に廻された。
その後、安倍政権の再登場と成り、朝日社内で放置されていた不明箇所が政府やサンケイ新聞などから執拗に指摘され、「表現取り消し」などの修正とお詫び記事を掲載する羽目に追い込まれた。そうなると担当した取材グループは、賞どころか、社内処分、配置転換の命が出て、居場所を無くして退職に追い込まれてしまった。
発表を急ぎ、10?も離れたところに9割の職員が避難した真相も解明されずに、職場放棄の様な印象を与えた事を、誤報と追及されてしまった。朝日には、その他「慰安婦問題の1部記事取り消し」と、その対応の遅さを「新聞ななめ読み」に書いた池上彰さんの記事を不掲載にしています。
この様な劣化はマスコミ界だけではありません。文科省によると、国別論文の発表数では日本は中国の1/10程度だそうです。又、OECD38ヵ国の平均年収は49100ドルに対し日本は38100ドルで22位(1997年14位)、韓国は41900ドルで17位(1997年は23位)です。さらにIMFによる1人当たりGDPでは、2000年日本は世界2位、10年は18位、昨年は28位に落ちています。
此れだけ稼ぐ力が下がれば賃金は上がりません。日本は成長が止まっているだけではなく、後退しています。
書評を書かれた、元グーグル日本法人代表の辻野紘一さんは『諸行無常の世にあって盛者必衰は昔からの真理。変わるべきタイミングで変わる事が出来ない存在は、それが企業だろうが、国家だろうが、個人だろうが例外なく滅んでいく』と書かれています。
(著者は1994年入社~2021年退社まで著書の章が変わるごとに新聞大手4社の発行部数の変化を入れています)