会報誌(DDKだより)
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2022年10月発行 第341号 DDKだより
人事労務相談:時間外労働の割増賃金率が引き上げられる?
Q.中小企業は来年4月1日から1ヵ月の時間外労働が60時間を超えると割増率が25%以上から50%以上に変更になると聞きました。詳しく教えて下さい。今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁
A.会社は、法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)を超えて社員が働く場合、25%以上の割増賃金を払う必要があります。その前に、過半数社員代表との間で36協定を締結し労働基準監督署長に届出が必要です(労基法第36条)。
設問の割増率は、既に大企業は月60時間超で50%以上の割増率が適用されています。中小企業にはその適用が猶予されていましたが、2023年4月1日から大企業と同じく月60時間超の場合50%以上となります。月60時間以下については従来通りの25%以上です。東京労働局の資料を参考に中小企業の割増賃金の種類をまとめると下記表のようになります。
今般の改定で深夜(22:00~5:00)の時間帯に月60時間を超える法定時間外労働を行えば、深夜割増25%に、時間外割増率50%が加算され75%以上の割増率に。休日の場合、月60時間超の時間外労働時間の算定は、法定休日に行った労働時間には含まれません(割増率35%以上)。それ以外の休日に行った労働時間は含まれます(法定時間外労働として50%以上の割増率)。
月60時間超の割増賃金の引き上げ分に替わり、社員の健康確保のため、代替休暇(有給の休暇)を付与することができます(労基法第37条3項、同規則第19条の2)。新たに過半数社員代表と労使協定を結びますが、代替休暇にするか賃金でもらうかは社員が選択できます。計算式は、代替休暇時間数=(1ヵ月の法定時間外労働-60)×換算率です。換算率は月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率から通常の割増賃金率を控除したもの。一般に50%-25%=25%で換算率は25%。仮に月80時間の時間外勤務であれば、(80-60)×0.25=5となり、代替休暇の時間数は5時間。詳細は各社の協定内容によりますが、法令は代替休暇の取得方法は1日又は半日単位のいずれかの付与です。有効期間は月60時間超の月の末日の翌日から2ヵ月間以内の期間。制度としての代替休暇が健康確保のため有効活用できるかは疑問があります。
今般、必要な対策は割増率の引き上げを回避することではなく、勤怠管理に客観的な記録を残し、無駄な時間外を減らすことです。新たな電子機器の活用を検討し業務効率化を徹底し、併せて増員や設備投資も考える必要があります。