会報誌(DDKだより)

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2022年12月発行 第343号 DDKだより

巻頭:インボイス対応は制度の理解から


齋藤 正広

 来年10月から導入予定の消費税インボイス制度。インボイス発行事業者の登録受付は昨年の10月から開始されていますが、今年10月末現在の登録件数は143万件と、国が想定している登録件数の2割程度にとどまっています。
 この間、多くの経営者の皆様にインボイス制度の説明をしてきましたが、「うちは課税事業者だからインボイスの登録申請をすればいいだけですよね?」と安易に考えておられた方が多く驚きました。
 今、大手企業は支払先の企業へ登録状況の確認書を一斉に送付しています。この意味は、まずは自社の登録番号を示して、「うちは消費税の課税事業者なので、あなたの登録番号を教えてくれないと消費税が控除できない。登録していないなら登録して番号を教えてね。登録しないなら、後で取引価格を(下げる)交渉したいから覚悟していてね。」ということです。
 実は日本の企業のうち課税事業者は320万社なのに対し免税事業者は510万社もあります。この免税事業者との取引は大企業よりも私たち中小企業のほうがはるかに多いのです。ですから私たちは自らの支払先にも同様の確認をする必要がでてきます。
 免税事業者はインボイスを発行できませんので、支払先が免税事業者を継続する場合、価格はどうしたらよいでしょうか?公正取引委員会は一方的に価格を引き下げたり、免税事業者であることを理由に取引をやめたりすること等が独占禁止法や下請法に抵触する可能性があると注意喚起しています。
 また、制度開始後3年間は免税事業者へ支払った消費税額の80%は仕入税額控除できる経過措置が設けられます。当然、この経過措置を考慮して取引価格の交渉が必要です。いずれにしても経理担当者は免税事業者への支払いは別枠で管理、計算しなければなりませんので大変です。
 一方、免税事業者の立場からすると、課税事業者を選択するよりも、免税事業者のまま多少の値引きを受ける方が、手取りが多くなるケースも多いでしょう。
 ここまでお読みになって、なんだかこんがらがってきませんか?言えることは、消費税の仕組みやインボイスの制度が分からないと交渉もできないということ。顧問税理士にしっかり説明していただき、対応方法の相談にのっていただいてください。
 インボイス制度については、日本商工会議所や税理士会も制度の再検討や導入延期を求め政府に要望しています。今月発表される与党税制改正大綱で一定の方向性が示される予定ですので、ぜひ注視していただきたいと思います。