会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2022年12月発行 第343号 DDKだより
金融・経営相談:「電子(手形)交換所」開設で取引はどう変わる?―手形・小切手の全面的な廃止に向けて―
Q.先日、電子交換所が開設されました。2026年度末までに手形・小切手が廃止されるとのこと。今後どのように進められようとしているのでしょうか?今月の相談員
中小企業診断士
中小企業組合士 伊藤 勝
A.全国銀行協会(全銀協)は、これまで全国各地の手形交換所で行なってきた手形・小切手の交換を、電子データ化による電子交換所に引き継ぎ今年11月4日からスタートさせました。新システム下において紙の手形・小切手は引き続き利用でき、金融機関に対し取り立て依頼できますが、統一手形用紙の変更や手形・小切手への記載方法などにいくつかの細かな注意が必要です。
▼「電子交換所」創設の背景
経産省通達により、2026年までに手形・小切手を全面的に廃止し電子化を目指すことになりました。(手形廃止の背景は「DDKだより、21年5月発行、第324号」をご参照ください)。この流れを受けて、手形・小切手が全廃され完全電子化されるまで過渡的に電子交換所が稼働します。全銀協は、2026年までの全面的な電子化に向けて、電子記録債権(でんさい)やインターネットバンキング等の電子決済サービスへの移行を勧奨しています。
▼約束手形等の全廃、電子決済サービス移行に向けて
1.電子決済サービスの主流「でんさい」導入によって、「支払い企業」にとっては、ペーパーレスによる[1]事務負担の軽減[2]コストを削減[3]支払い手段の1本化が図れます。「受取り企業」にとっては、[1]紛失や盗難リスクを回避[2]分割・譲渡が容易になる[3]取り立て手続きが不要となるなどメリットは少なくありません。
一方、中小企業は長年の取引慣行や資金繰りへの対応、IT活用能力などが障壁となり順調に移行が進むかどうか課題も多いと考えられます。
2.全銀協による主な取り組みの提言事項を紹介します。
(1)電子決済サービスにかかる手数料の合理的、適正な価格への見直し(2)電子的決済サービスの普及促進に向けて、取引先への支援強化(3)インターネットバンキングの商品性の向上、セキュリティ強化(4)中小事業者向けの新規導入サポートの強化(5)約束手形の利用を廃止する企業に対する資金繰り支援。
3.公的支援については、「低利融資制度の提供による資金繰り支援」や「中小事業者向けIT導入補助金等の支援の拡充」が望まれます。