会報誌(DDKだより)

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2023年02月発行 第345号 DDKだより

巻頭:エスカレーター条例


沼田 道孝

 埼玉県は全国で初めて「エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」=「エスカレーター条例」を制定し、2021年10月1日から施行しています。エスカレーターや動く歩道では、歩いてはいけない、もちろん走ってもいけないという条例です。
 この条例には困った。階段は登るものという感覚でエスカレーターを歩いてきた人間としてはさてどうしたものか。山歩きのために階段は足腰を鍛えるところと思っていて会社では毎日4階まで歩いています。今のビルになって7年たちますが、エレーベーターを使ったのは2回しかありません。さてどうするか、結論は、駅のエスカレーターを避けて遠回りしてホームに行くこと。
 何故このようなことを書いたのか。目的によって手段が変わる。生産性や効率性だけを目的にすれば出てこない発想も、“エスカレーターを必要とする人でなければエスカレーターを使わない”という選択により、様々に視点を変えることができます。
 エスカレーターが弱者に気配りをした街づくりのように感じますが、その目的が様々な障害を持った方々にとって十分に安全に活用できる条件を満たし、整えられている状態には程遠いのが実情です。
 例えば都内の地下鉄のエスカレーターは、すぐ脇に階段もありますが、階段の選択肢がない場合も多い。深度もあり、階段を選んで登りきると満足感が得られるほど段数が多いという優れものもあります。階段を歩きながら、安全性や緊急時の対応は十分に周知されているのか、たまにしか利用しない私にとって上まで行く間に息が上がるような地下鉄の階段に不安を感じる場合もあります。
 都内でエスカレーター条例を施行するには街づくりの考え方を変えないと難しい。安心、安全、弱者や障害のある方にも十分に配慮した街づくりが展開されることが求められます。そのような街づくりが進められてこそエスカレーター条例が十分に生かされるのではないでしょうか。
 赤羽駅ではエスカレーターを歩き、さいたま新都心駅ではエスカレーターを立ったままでいるような行動をしているようではいけませんね。