会報誌(DDKだより)

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2023年06月発行 第349号 DDKだより

人事労務相談:定昇とベースアップについて

Q.当社は、毎年、世間相場をにらみながら賃上げしています。今年は物価の高騰もあり、
平均3%の賃上げを予定しています。ニュースでは、定昇×%、ベア×%のような報道がありますが、この定昇とベアの関係を教えて下さい。

今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁

A.一般に、賃上げとは賃金額を上昇させること。内容は、基本給にかかるべースアップ(略してベア)や定期昇給、他に手当の改定が含まれます。ベアとは、企業の業績が良い場合に、地域水準や他社水準に賃金を合わせるなどの目的で、基本給の賃金表の書き換え(増額)を行い、給与を上昇させることを意味しています(厚労省「賃金引き上げ等の実態に関する調査」では、賃金表の改定により賃金水準を引き上げることと定義)。書き換えを行うことで、賃金表が適用される社員の賃金額が上昇します。ベアは、特に、法的根拠があるのではなく(最低賃金を下回る水準でなければ)、実施は任意です。今般の急激な物価高騰では、ベアがテーマになりました。今春闘では連合発表で定昇とベア合わせ、30年ぶりの賃上げ率(第4回集計で3.69%)になっています。
 定昇とは、定期昇給の略語で、あらかじめ労働契約、就業規則や労働協約に定められた昇給に関する制度です(前掲の定義も同旨)。基本給に賃金表を活用している場合は、その書き換えではなく移動となります。例えば1等級に属する現在20号200,000円の社員が1年経過で22号210,000円に昇給する等(例として1年で2号進む同じ等級内での移動)。昇給に関する事項は、労働契約、就業規則には必ず記載する必要があります(労基法第15条1項、第89条2号)。原則として、一定の時期に毎年増額するのが一般的。就業規則では、「毎年4月1日に基本給について昇給する」と規定しているのに、昇給がなければ、労働契約、就業規則違反となり、引上げが必要です。但し書きで「経営状況により昇給しないことがある」とあれば、昇給しないこともあります。他方、規定の方を「毎年4月1日に基本給について昇給することがある」に改定すれば、昇給するかどうかは会社に裁量があり、昇給しないことが容易となります。
 中小企業でも大企業のように賃上げは行われています。賃金表を持たない会社が多いので、前述のベアと定期昇給の区別(実務は定期昇給が先でベアが後の順)があいまいです。また、基本給の改定による賃上げは賞与や退職金の増額に結びつくので、諸手当の改定で賃上げをしている例もあります。一概に悪いとは言えません。結局、賃金は会社ごとに個性があり、世間での定昇やベア率、あるいは賃上げ率にこだわる必要はないでしょう。
 賃上げは、競争ではなく、社員の生活向上のためです。自社の経営成績や現実の賞与や退職金の規定を斟酌し実施することが大切です。