会報誌(DDKだより)

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2023年07月発行 第350号 DDKだより

巻頭:ネコ型ロボットに出会って


椎名 敬一

 会社近くのファミリーレストランで、ネコ型の「配膳用ロボット」を見た。すかいらーくホールディング(HD)で導入されているこのロボットを、ご存じの方も多いだろう。
 注文は、テーブルにあるiPadの画面でする。ほどなく陽気な音楽を鳴らしながら、通路にロボットがやってきた。見た目は円柱形で、お盆を乗せる段が4段ある。一番上にモニターがあり、ネコの顔が映る。モニターの上がとがった猫の耳になっている。背中にテーブル番号が表示され、緑色に光った段のお盆が注文品だ。
 「気をつけて取ってくださいニャ」お客がお盆を取り終わると「お食事をお楽しみくださいニャ」と言って、厨房に帰っていく。ネコの目がくるくると動いて近くの子供たちは「かわいい」と大喜び。30種類以上の表情や言葉で応えるそうだ。
 接客は店員、注文はiPad、配膳はネコ型ロボット、片付けは店員、会計はセルフレジ(電子マネー、クレジットカード)または店員(現金払い)だ。
 すかいらーくHDは2021年8月から実証を始めた。22年末までに「ガスト」や「バーミヤン」など、7ブランドの2100店に計3千台が導入された(日本経済新聞2023年4月19日)。ガストでは店員の歩行数が42%減、片付け時間35%減、ピーク時の回転率は2%アップとなった。「重たいトレーを運ばずに済む」「ドリンクバーの清掃や、接客、レジ対応に集中できる」と従業員からも好評である。仕事量が減れば高齢者も採用でき、雇用機会が増える効果が期待できる。
 人手不足の我が国で、ロボットとの共生は待ったなしの時代となった。これからロボットやChatGPTをはじめとしたAI技術とどのように関わっていくのか、私たちにとって難しい判断が続く。
 例えば 先ほどのファミリーレストランでお客様からクレームが出たとする。ネコ型ロボットはその対応ができない。ロボットは入力された命令を忠実に遂行しているだけで、責任を取ることはできない。
 どのように事業を進めていくか、「決断を下し」「最終的に責任を負う」仕事は人間にだけできるものだ。今話題となっているChatGPTにしても、経営方針を決定したり、起きた結果について責任を負うことはできないのだ。ロボットやAIはあくまでも道具である。どのように道具を使いこなしていくか、私たち人間の力が問われている。