会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2023年09月発行 第352号 DDKだより

金融・経営相談:103万円の壁と130万円の壁は、税金と社会保険のしくみが壁となっている 

Q.パート収入に関して103万円の壁とか、130万円の壁とか、問題になっていますが、具体的にどういうことか教えてください。

今月の相談員
税理士 平石 共子

A.103万円の壁とは、103万円以下の給与収入については、所得税がかからない境目のことです。これが第1の問題。
 計算式は、103万円- 55万円(給与所得控除)- 48万円(基礎控除)= 0となります。
 103万円の壁は、いったいいつから始まったのかというと、1995(平成7)年に基礎控除が38万円に改正された時からです。2020(令和2)年から基礎控除は48万円になったのですが、給与所得控除が65万円から55万円に下げられたので、依然として103万円の壁のままです。
 第2の問題は、配偶者の所得税の計算、ここでは妻がパート収入で、夫がサラリーマンの場合で考えてみます。妻のパート収入が103万円以下で夫の給与収入が1095万円以下であれば、夫の所得税の計算で配偶者控除38万円を差し引くことができます。つまり、夫の所得税を少なくすることができます。
 さらに、会社によっては配偶者手当の支給基準を妻の給与収入103万円以下としているケースもあるので、103万円は、働くうえで大きな壁となっているのです。
 次に、130万円の壁とは何かというと、妻の給与収入が130万円を超えると、夫の社会保険上の扶養ではなくなり、自分自身で社会保険に加入し、保険料を納めなければなりません。パートやアルバイト先の社会保険に加入するかどうかは、勤務日数や時間数などによっても異なります。もし、パート先の社会保険に加入しない場合は、国民健康保険と国民年金に加入することになります。
 130万円以下であっても下記の条件をすべて満たすと、夫の社会保険の扶養を外れることになります。
【2022年10月の条件変更】
社会保険の適用条件
(1)従業員の人数が101人以上
(2)月収が88,000円以上
(3)2か月以上の雇用の見込み
(4)週20時間以上働いている
(5)特定の学校に通っていない(学生ではない)
 この2つの壁の間には、103万円を超え、130万円以下の場合があります。この場合、103万円を超えると所得税の税負担が生じます。しかし、夫の所得税の計算では、夫の給与収入が1095万円以下の場合は配偶者特別控除38万円の控除ができます。
 この7月最低賃金の引上げが厚生労働省から発表されましたが、所得税や社会保険についても制度の見直しが求められます。