会報誌(DDKだより)

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2023年10月発行 第353号 DDKだより

巻頭:AI自販機はヒトの心をつかむ?


石田 仁

 コロナ前、品川のNTT施設でICTの実際について見学する機会がありました。最も驚いたのは、数10人が集合している場所で、一瞬の内にカメラが「不審者」を割り出したこと。彼の行動に表れた不審な行動(私には分かりませんでした)をカメラがキャッチし、AIで蓄積されたデータと照合し「不審者」らしいと赤点滅で知らせてくれるのです。名称は「AIガードマン」。空港やオリンピック等多くの群衆が集う中で不審者を探し出すために開発されたそうだ。まさにスパイ大作戦に登場するシステム。
 ほぼ、同じころ、企業のストレスチェックの補助、また人を採用する際の適格性判断の一つとして、顔認証システムを活用し、短時間面談するだけで、ある程度の精神状態を判定できるシステムに出会う。人の内面は少し面談しただけではわかりません。また、海外にいる外国人を採用する場合、実際に出掛けなくてもこのシステムで面談すれば、人物の性格把握等が容易になります。
 私も実験してもらいましたが、結果は知人の評価と驚くほど合致。知人の診断結果も私が納得できるレベルでした。「これは使えるな」と感心していたら、某会合で出会った社長は既に知っており、「今、販売しているよ」と。これにもびっくり。当時、相当高額なものです。デジタル音痴の私でさえ、AIの活用、進化の一端を垣間みることができました。5年前のことです。  
 “自販機は心をつかむ「小売店」”という見出しが目に入ってきました(日経2023.7.5朝刊)。新聞によれば、某飲料メーカーは人口知能を活用して利用者の表情を解析、その人の気分に合った商品を提案する実証実験を始めたようだ。自販機に設置したタブレットを5秒ほど見つめると喜怒哀楽に合わせ、お薦め商品が画面に3つ程表示される。まさに「表情を読む自販機」です。表情筋の動きをカメラで捉え、疲れを知れば栄養ドリンクや爽快感のある炭酸飲料などを薦めると言う。
 ここには、私が、5年前に体験した以上の驚きがあります。AIが、「ヒトの心、感情を読み取り」、次に、必要な対策を示すレベルに達しているようにみえるからです。
  今、生成AIは、猛烈なスピードで進化。明確で具体的な指示や質問がされれば、適切な文章やリアルな映像等ができる反面、フェイクなモノを簡単に作るリスクも懸念されています。一部では、顔認証システムは人権侵害との声があがっています。
  それでも、感情を読み取る自販機に出会ったら、購入してみたいと思う。