会報誌(DDKだより)

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2023年10月発行 第353号 DDKだより

人事労務相談:70歳までの就業確保措置とは

Q.2021年4 月から70歳までの「就業機会の確保措置」が新たに努力義務として課せられています。すでに、65歳までの雇用義務が課されていますが、その義務と今般の努力義務とはどんな関係でしょうか。

今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁

A.国は急速な少子高齢化で人口が減少する中、働く意欲がある人なら年齢にかかわりなく、その能力を発揮できるよう高年齢者を活用できる環境整備を図っています(高年齢法)。
 まず、65歳まで従業員を雇い続ける義務を企業に課しています。この内容は(1)定年を65歳以上に引き上げるか、(2)65歳までの継続雇用制度の導入か、(3)定年を廃止するかです。いずれかの雇用確保措置を講じないと行政から指導や勧告を受けます。
 大半の企業では、無理なく導入できる継続雇用制度を選択しています。ここでは、「65歳までの雇用の機会を与えること」が義務であり、定年が65歳になったわけではありませんので留意して下さい。
 65歳までの雇用機会を与える義務に重ね、2021年4月改正法では、70歳までの「就業確保措置」を努力義務として加えています(同法10条の2)。
 この努力義務を負う事業主は、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主又は継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主になります。
 具体的にこの努力義務は、定年をさらに70歳以上に引き上げるかまたは70歳以上の雇用継続制度(特殊関係事業主に加え、他の事業主も含む)を導入、あるいは定年を廃止する等既存の前掲(1)から(3)の雇用確保措置の中身を底上げすることでも実現できます。さらに、この改正は、就業機会を拡げ、雇用だけではなく、本人への創業支援措置として(4)自社と業務委託契約を結ぶ、(5)自社が実施するあるいは自社が委託や出資する団体が行う社会貢献事業で働ける制度の導入も選択肢として選ぶことができます。(4)や(5)の措置は、立て付けとして、雇用契約ではありません。当該社員が不利益にならないよう、所定の内容を網羅した実施計画を立案し、従業員代表の同意を得て、内容を社内の見やすい場所に掲示する等周知する必要があります。(4)や(5)を選択する場合、実質的に労働者性があり、低賃金や長時間労働の実態があればトラブルに発展しますから注意のこと。
 今後、人手不足が深刻化する中、高齢者の就業確保が求められるのは必至です。努力義務とは言え、何らかの就業確保措置を講じるべく、早めに着手しましょう。