会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2024年01月発行 第356号 DDKだより
人事労務相談:就業規則に規定のない降格処分はゆるされるか
Q.当社の就業規則には降職や降格の処分は明記されていませんが、そもそも、降職や降格はどのような意味でしょうか。またどんな場合に使われているのでしょうか。今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁
A.一般に降職は役職者としての職務を果たせない場合に人事上の措置として、役職位を降ろす場合に使われる用語です。部長の任を解いて、課長補佐にしてしまう場合。任命した経営側の裁量で行われます。
他方、降格は本来、給与体系で職能資格制度を採用している場合、資格を上位資格である参事から下位の副参事に格下げする場合を降格と称します。本人の仕事振りを人事考課で査定し、現在の資格に適合する能力を発揮できていない場合に行われます。これは制裁ではありませんから、各社の人事考課規定に基づくことになります。
しかし、降格も降職も、人事制度としてではなく、制裁の一種として活用される場合をみかけます。その場合は、過去の弊害に鑑み、罪刑法定主義の観点から、就業規則などにより構成要件が明示されている必要があります。労基法も社員を制裁する場合には、労働契約や就業規則に明記するよう規定しています(労基法第5条、第89条)。
管理職層の社員がその地位に相応しい行動や責任意識が欠け、飲酒運転や酒にまつわる軽率な行動が散見される場合、制裁として「降格」や「降職」を課すこともあるでしょう。その場合は、制裁ですから、就業規則上の規定に基づく必要があります。制裁として課されたとしても、労基法の制裁としての減給には当たらないとの考えが通達です。制裁として、部長職を解任され課長職になり役職手当が減じられても減給の制限(1日分の半額、賃金総額の10分の1)には該当しません。ただし、職務変更により、当然には異なった基準の賃金が支給されない制度の場合に、格下げないしは降職をした者だけ賃金を引き下げるときは、実質賃金を継続的に減給するものであり、労基法の減給の制裁にあたります(下労働基準法厚労省労働基準局編)。
いずれにしても、「降格」や「降職」については、その基準を就業規則等に明記する方が混乱を招かないでしょう。