会報誌(DDKだより)

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2024年04月発行 第359号 DDKだより

金融・経営相談:「資本性劣後ローン」とは

Q.最近耳にした「資本性劣後ローン」とは、どんな借入金でしょうか?本ローンを取り扱っている金融機関はありますか?

今月の相談員
中小企業診断士 伊藤 勝

A.「資本性借入金」とは、通常の借入金よりも資本性が高く、借入金でありながら出資を受けて資本金が厚くなった株式に近い性質を有する借入金です。
 本ローンの特徴は、出資金に近い借入金であるため償還期間が長期に亘るほか、返済の優先順位が劣る(低い)借入金とみなして取扱うことができますので、「資本性劣後ローン」と呼ばれています。
 本ローンのメリットは、資金繰りが改善されることです。長期の「期限一括償還」が基本のため、月々の返済が不要(利息のみの支払い)となり、資金繰りが楽になります。もう一つのメリットは、債務超過となり資本が毀損している企業が、既存の借入金が「資本性借入金」にシフトされ資本とみなされれば、債務超過の状態から、資産が負債を上回る状態となり、債務超過が解消されることになります。このように、バランスシートの改善が図られることとなり、金融機関による債務者の格付けがアップし、新規融資を受けやすくなる効果が期待できます。
 本ローンは、主に政府系金融機関が取り扱っています。その一つ、日本政策金融公庫の「新型コロナ対策資本性劣後ローン」による支援内容の概要は以下の通りです。参考にしてください。
▼対象:新型コロナの影響を受けた企業で、事業計画を策定し、民間金融機関等による協調支援体制が構築されている企業(*)など。▼貸付限度額:中小企業事業は10億円、国民生活事業は7200万円(別枠)
▼貸付期間:5年1ヶ月以上20年以内(期限一括償還)
▼貸付利率:[1]当初3年間及び4年目以降赤字の場合は年0.5%、[2]4年目以降黒字の場合は、貸付期間に応じ、年2.6%~2.95%。
▼担保・保証人:無担保、無保証人。
▼その他の条件:[1]本資金は、金融機関の資産査定上自己資本とみなすことができる。[2]法的倒産の場合、本資金は全ての債権(償還順位が同等以下を除く)に劣後する。[3]4年目以降は、直近決算の業況に応じて、毎年適用利率の見直しを実施。[4]融資後5年間は、原則として期限前返済は不可。
(*)(1)原則として1年以内に民間金融機関から融資等の資金調達が見込まれること。又は(2)認定経営革新等支援機関(税理士等)の支援を受けて事業計画を策定していること。