会報誌(DDKだより)

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2024年05月発行 第360号 DDKだより

人事労務相談:基本給の決定方法について

Q.基本給を決定する方法にはどんなものがありますか。

今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁

A.多くの会社の給与体系は基本給と諸手当で構成されています。ここでは、諸手当の部分は除き、基本給の決定方法についてお話します。
 基本給は、年齢、勤続、仕事の遂行能力、経験や技術等を総合勘案し決定します。総合勘案式と称してもいいでしょう。会社には、年は若いが能力がすぐれていて、勤続や経験のある先輩より仕事ができる人もいれば、勤続は長いが仕事はさほどでもない社員もいます。仕事ができる人には何らかのプラスを加えたい。そこで、年齢や経験、能力等を総合的に考え決めます。また、他所で働いていたが、ムリを言って採用した人もいます。そのような事情も含め、柔軟に基本給を決定できる方式と言えます。中途採用の多い中小企業ではよくみかけます。たくさんの要素を取り込むため、ルールがあってないも同然。社長が頭の中で裁量し、決める方式と言えます。あまり、明瞭ではありません。水準が社会的相場と隔たりがあれば社員に納得のいかない場合もあります。
 こうした不都合を改善するには、簡便な方法として1つの要素で基本給テーブルを作成し明示することです。通常は、年齢をモノサシとして作成します。年齢が基本給を決定する基準とされる理由は、一般に年齢や勤続とともに知識、技術、職務遂行能力が高まるのでこれを評価するという意味があります。年齢は客観的事実です。しかし、年齢や勤続が高まれば、技術がアップすると言うのは業務の種類により一概には言えません。多少、総合勘案方式よりも公平感と透明性があります。
 以上のように、年齢だけを構成要素とする基本給の決定方式は、個人差の出る業務や中途採用の多い中小企業には運用上問題が生じます。第一の総合勘案方式は、柔軟ではありますが客観的基準が明確ではありません。そこで、第三の併存給方式を紹介します。
 基本給の構成要素を年齢と能力(知識、技術や職務遂行能力)とに分け、年齢の要素で生計費を、能力の要素で働きに応じた部分の給与を決めます。これを併存給方式と呼びます。社長は、仕事のできる人には働きや貢献度に応じ支給し、基本的生計費はすべての社員に保障したいので、この方式が合っています。その場合、年齢については、給与テーブルを作成すべきでしょう。後者の能力給部分は、中小企業でテーブルを作成・運用するのは容易ではありませんが、働きぶりを評価し決定することは明文化します。
 基本給は、固定的な年齢部分と評価決定される能力部分を併存させてバランスを取ることが肝です。年齢部分の割合が高い会社は、伝統的給与体系で社員にやさしい体系。また、評価決定する能力部分の割合が高い会社は、まさに実力主義と言えるでしょう。