会報誌(DDKだより)

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2024年06月発行 第361号 DDKだより

金融・経営相談:株主から会社の帳簿を見せてほしいと言われたら、どう対応するか

Q.当社は外部の関係者に出資をしてもらい設立した会社です。この度株主総会の案内を送付したところ、株主から新規取引先との取引条件を教えてほしいといわれました。取引先とは秘密保持契約を結んでいるので困っています。会社としてはどう対応すればよいのでしょうか。

今月の相談員
税理士 平石 共子

A.会社法は、会社の出資者である株主への情報提供の趣旨から、少数株主権として、会計帳簿等閲覧謄写請求権を規定しています(会社法433条1項)。具体的には、株式の3%以上保有していれば請求権があります。ですから、株主からの請求に対しては真摯な対応が求められます。
 どんな資料を閲覧できるかというと「会計帳簿又はこれに関する資料」となっています。
「会計帳簿」は、総勘定元帳、現金出納帳、仕訳帳、補助簿などで、「これに関する資料」とは、契約書、領収書、伝票などです。
 しかし、むやみに請求できるというものではありません。株主が会計帳簿等の閲覧謄写を請求するには、請求の理由を明らかにする必要があります。請求を受けた会社側が請求理由を見て該当する会計帳簿を特定することが可能な程度に具体的に明示することが求められます。会社としては、請求の理由や目的を記載したものを書面でもらうようにしましょう。
 具体的には「取締役の不正行為の疑いに関し調査をするため」とか「経理上の疑問点解明のため」などの理由が一般的です。
 ただし、請求された内容が広範囲に及びかつ企業秘密など会社の利益に深くかかわるもので、濫用されると会社の利益が害されるおそれがある場合には閲覧請求を拒絶することができます。
 ご質問のケースは、新規取引先との取引条件について、秘密保持契約を結んでいるということですから、断ることができます。その際は、取締役会にかけて検討し議事録として残しておくとよいでしょう。
 余談ですが、株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、決算報告書の閲覧を請求することができます(会社法442条3項)。出資しているにもかかわらず株主総会の案内が来ないとか、売掛金の回収が滞っている会社に対しては、閲覧請求を申し出てみるのも有効な手段と言えます。