会報誌(DDKだより)

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2024年10月発行 第365号 DDKだより

巻頭:この草、花、樹の名は


石田 仁

 10月、季節が少し外れるが、草花や樹木の名が気になり始めたきっかけを書こうと思う。
 20年近く前、町会の掲示板で見つけた5月連休開催のグリーンウォーキング。参加費を払うと派手なバンダナが配布され、完歩するとペチュニア等の鉢植えがもらえる。コースには植木で有名な安行や地元の古刹が入り、躑躅、皐月、芍薬、牡丹、石楠花と今や盛りの花に出会う。めずらしい一輪草の群生地も歩く。新緑がまぶしく鮮やかでとにかく気分がいい。
 同じ頃、健康のため、奥多摩の一人山歩きを始める。“奥多摩は四季折々に色を変える森林があり、絶えることのない清流が流れ、空気が澄み、水がおいしい”、そんな素晴らしい里山を21世紀に残そうとする奥多摩町の取組み。新聞の小さな記事で知る。1年以内に大丹波から川野までの21の集落を走破し、賞状と記念品を頂いた。山歩きをしている途中、よく渓谷沿いにみかけた黄金色の花。後にヤマブキ(山吹)と教わる。身近な草花や樹木の名を知りたいと思った。まず、野山の花や雑草、次に樹木の図鑑を入手。実際に調べたら付箋をし、栞で残すことも。
 30年来の仕事仲間。40代の頃から一息つくと奥日光へ。深呼吸するだけで心身が蘇る。初夏は、戦場ヶ原、木道の脇に広がるズミ(酸実)が圧巻。サクラのような5弁だが、可憐で小さな白い花に緑の葉が映える。
 コロナ後、いや骨折後か。6月の第1週、久しぶりに奥日光散策を敢行。気温9度と前日の知らせで夏支度から急遽冬物を用意。日光駅に着いたら、いきなり雨。体力、脚力が伴わず、散策は無理と判断。戦場ヶ原や小田代ヶ原は明日にし、駅からバスで奥日光終点まで直行。取り急ぎ、荷物だけ宿におき、スケジュールを立て直そうと蕎麦屋に向かう。仲間の一人が、小走りで店前の樹木に近づき撮影。2本並び、左は淡い紫色、右は白色の小さい花がぶどうの房のように咲いている。雨に濡れ、いく房もぶら下がる。誰ともなく「何の花?」。スマホを使っても、その花を特定できず、帰ってから、撮りおいた写真を頼りに調べる。結果、最初たどりついたのがニセアカシアの花。確かに、小さな花が集まり、ぶどうの房のよう。葉が細長い楕円で、枝に棘がある。その葉はどちらかというと丸く、枝に棘はない。いろいろ調べ、花の色、葉の形状、木肌の特徴で名が分かった。
 結論は、“ライラック”。おそらく正しい。半世紀も前、札幌市がニセアカシアとライラックを市民投票にかけ、市の木として僅差で選んだ。フランスではリラと言うそうだ。何だか、とても嬉しい気分になった。草花の名を知ることがこんなに楽しいとは。
 皆さんにもぜひ、おすすめしたい。気分転換になります。