会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2024年12月発行 第367号 DDKだより

金融・経営相談:自社の事業承継への取り組み ― 中小企業・小規模事業者向け事業承継 ―

Q.約50年間食品製造業を経営、事業は順調です。後継者難で不安がありますが、どうしても事業承継をしたいと考えています。どのような取り組みをしたら良いでしょうか。又、国の支援策はありますか?

今月の相談員
中小企業診断士 伊藤 勝

A.順調な業況を背景に事業永続に向け、「事業承継準備から計画実行までのステップ」と大切な「事業計画作成のポイント」について、以下を参考にお取り組みください。

1.「事業承継準備から計画実行までの6つのステップ」
 (1)事業承継に向けた準備の必要性を認識
  後継者の育成には5~10年ほどかかるケースが多いので、早めの決断が肝要。
 (2)経営状況、経営課題等の把握
  経営状況を把握するためのツールを活用し、課題の改善に向けた方向性を明確化。
 (3)事業承継に向けた経営改善
  経営者が将来の事業承継を見据えて、本業の競争力の強化などにより企業価値を高めることで、会社を後継者にとって魅力的な状況に引き上げる。
 (4)親族内・従業員後継者又は社外への引き継ぎの方向性を決定
 (5)事業承継計画の策定
  円満に引き継ぎを進めるために、後継者と共に承継時期を明記した事業計画の策定。
 (6)事業承継の実行
  株式、事業用資産や経営権の承継を実行。
2.事業承継計画作成のポイント
 事業承継計画の策定にあたっては、まず会社・事業の現状を把握し、会社の中長期的な経営方針や目標を設定します。その上で、事業承継の実行に向け、会社の10年先を見据えて会社・経営者・後継者それぞれの具体的な行動を盛り込んでいきます。
 事業承継後に事業運営を担うのは後継者です。経営者と後継者とが「事業承継」という共通の目的意識をもって計画を策定する事が大事です。
 計画を策定する際の経営方針に盛り込む基本事項として、(1)事業の維持拡大、(2)事業領域を堅守、(3)新事業への挑戦、(4)組織体制のあり方、(5)必要な設備投資計画、(6)売上げ、利益、シェアなどがあります。  
3.その他の留意点
 事業承継計画の策定後、事業承継税制の研究、事業承継のための資金調達、債務や個人保証への対応など多岐に亘る専門知識が必要となります。
 仕事を続けながらの大変な作業をサポートしてもらうため、国が設置する公的相談窓口「事業承継・引き継ぎ支援センター」の活用を検討されたらいかがでしょうか。

(HPアドレス:https://shoukei.smrj.go.jp/)