会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2025年01月発行 第368号 DDKだより
巻頭:日本原水爆被害者団体協議会 平和への願い
青木 正
あけまして おめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
昨年12月、日本原水爆被害者団体協議会(略称 被団協)の方々がノルウェーの首都オスロでのノーベル平和賞授賞式に出席されました。永年の核廃絶への地道な活動が評価され、この絶妙なタイミングかつ最大限に注目される場において、高齢の被爆体験者しか語りえない「生の声」を全世界の方々にお伝えできたのは、とても素晴らしいことと心から感動いたしました。その後の現地学生や市民団体との和やかな交流会も、意義あるものでしたね。まさに紛争地域でのエスカレーションが取り沙汰されているなか、抑止力としての存在意義を担うことでこれまで心ならずも正当化されてきたものが、その意義を逸脱する状況に陥るかもしれないことはとても残念です。
実は私の妻は生まれも育ちも広島市で、親族の中には身体にケロイド跡がある被爆者(故人)もいて、教育の課程において土地柄 ‘原爆’ という2文字とは隣り合わせのような状態で育っております。私も原爆資料館に伺いましたが、それはもう惨絶これ極まりなく暫し絶句の連続でした。妻は広島の短大を卒業後、恩師に背中を押され、一念発起して米国に3年間留学、米国人はもとより、中南米やアジア各国からの留学生と寮生活を共にして、文化、慣習、価値観の相違を学び、さらに広島市出身ということで少なからず戦争や原爆などについても教授や学友たちと語り合えたことは、彼女の人生での貴重な体験として今もって深く心に残っているそうです。そして縁とは不思議なもの、留学中にジョージ・W・ブッシュ大統領とお言葉を交わす機会を得て、我が家に当時の写真が今も残っております。
世界各国は、お互いの恩讐を越えて凄惨な大戦が二度と起こらないように国際連合を創設しましたが、大国に加盟してもらうために常任理事国の拒否権を設定したことで、最重要案件においては、悲しいかな、たびたび機能不全に陥ってしまいます。そんな現状の中で、今回被爆を実体験された方々が、ご高齢なお身体にかなり負担のかかる海外渡航までして、言語明瞭な「生の声」を発信されたことは、まさにこの時、この地で、歴史に名を刻むものでした。
今年こそ「分断と対立」ではなく、全世界の人々が笑顔を取り戻せて、明るいニュースが駆け巡るような「融和と協調」の年のスタートとしたいものですね。
今年一年、良い年でありますように!