会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2025年01月発行 第368号 DDKだより
人事労務相談:始末書を提出しない社員への対応
Q.無断欠勤や遅刻が断続的に続く社員に対し、口頭で再三注意していますが、改善の兆しがありません。そこで、就業規則上の懲戒処分として当社では一番軽い始末書の提出を求めましたが無視されています。このまま、放置することもできず、どのように対応したらよいでしょうか。今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁
A.始末書を提出させることで反省を促し、社員に勤務態度を改善する効果がみられなければ、会社としては、指導の手詰まりになり、規律が緩み、職場環境が悪化します。
始末書の提出は、会社が企業秩序維持のため、円滑な運営を可能にするための制裁の1つです。通常、制裁は就業規則に記載します(労基第89条、91条)。その始末書の提出が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には権利濫用で無効になります(労契法第15条)。ご質問では、再三の口頭指導でも改善されないのですから、会社が就業規則記載の懲戒処分として始末書を提出させる行為は合理性のあるものです。ただ、始末書提出を怠った場合、業務命令違反として新たに懲戒処分を課すことを否定する判例もあります。現在の雇用契約における労働者の義務は労務提供義務に尽き、使用者から身分的人格的支配を受けるものではなく、内心の自由は強制されないとする側面があるからです。
就業規則上の懲戒処分としての始末書の提出は、本人が心から反省し、謝罪文を書かせることだけが目的ではありません。拒絶する場合は、事実の報告書の提出に切り替えましょう。心から反省や謝罪がなくても、業務上の無断欠勤対策として、事実経過についての報告を記録として残すことです。無断欠勤を続け、職場活動になじまない社員に対し、事実を積み上げ、改善していくことは必要なことだからです。
これも提出しない場合は、どんな仕事をしているのか、毎日の業務について日報を書いてもらうことも改善策になるでしょう。今後の配置変更や人事考課の参考に役立てることができるからです。本人や仕事を指示する上司も根気のいる作業ですが、丁寧に取り組んでみましょう。