会報誌(DDKだより)
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2026年05月発行 第384号 DDKだより
巻頭:「私の履歴書」(日経)、村木厚子さんを読んで
河原 八洋
村木さんは2009年6月13日、大阪地検特捜部の呼び出しを受け、翌日地検に出頭し聴取を受けて、その日の夕刻、担当検事より「逮捕」を告げられた(※元厚生労働次官,逮捕時は厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)。
当初、地検が描いていたのは『偽の障害者団体から国会議員を通じて証明書を出せないかと、役所に働きかけが有り、役所としては提出する法案の為に議員に恩を売っておきたかったので、上司から指示を受けた私が、係長にニセの証明書を作る様に指示し、その証明書を私が団体に手渡した』というものだった。
持ち物や身体検査をされたうえで、監視カメラ付きの独居房へ入れられ、家族には警察から連絡するので「連絡先を教えて」と言われた。携帯電話を取り上げられる前に、娘2人にも伝わる様にしたかったが、スイスに出張中だったご主人に『たいほ』の3文字を送るのが精いっぱい。
検察の聴取は弁護士が同席するのでは無く、話した事が全て記録される訳でもない。それとは別に、村木さんが話した事のほとんどが調書に成っていない。検事が必要と思った処だけが、調書にされる。知っている事をきちんと話せば、分かってもらえると思っていたが、検察にとって大事なのは、ストーリーに沿った有罪の証拠を集める事なのだ。検事の質問に答えても、検事が必要とする処だけが記載される。何度訂正を申し入れても、受け入れてもらえず、根負けしてその日の調書にサインしてしまう。「残念ながら取り調べが公平公正とは言えない」と思った。
弁護士の立ち合いが無いので相談したら、話が無視されている処が有れば、僕宛に手紙を書いて証拠を残しましょうと、アドバイスを受けて実行した。
この間村木さんが読んだ本は相田みつおの「人間だもの」の他150冊。頂いた手紙は500通、面会に来てくださった人は70人に成ったという。また弁護士さんが『真実を貫け』と書かれた友人や同僚の寄せ書きを持って来て、アクリル板越しに見せてくれた。こんなに応援してくれている方が居ると思うと力が湧いて来たと言う。
拘留中に検察側の裁判資料を読み解く。何月何日に何があったかをリスト化し、物的証拠や裏付けのあるものに印をつけ、それを探る。検察側資料には、「6月上旬に団体が私に証明書の発行を求め、私が係長に指示した」ことが記載されているのに、FD内に記録された証明書のプロパティの日時は6月1日1時14分32秒。「私が命令したとされる時期」より早く証明書ができているのはおかしい。すぐに弁護士に知らせる。これが、無罪、釈放につながる。2010年9月10日大阪地裁より無罪の判決。後、担当検事は証拠隠滅で逮捕へ。
身に覚えのない罪で逮捕され、164日間も拘置所に入れられた。頼ることをためらう必要はない。たくさんのものに少しずつ依存できるようになれば、頼られる方の負担も軽くなると。
現在、村木さんは、誰もが安心して生きられる社会へ、福祉の道に踏み出されている。