会報誌(DDKだより)

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1997年05月発行 第36号 DDKだより

巻頭言:「それでも経営学は科学である」

田口 良一       
     祝経営研究所次長
     最近の主な論文
     「昔サラ金、いま国金」
     (「別冊宝島」249号)
     「『最低資本金』1千万円の無明」
     (「世界」1996年5月号) 
  
 


 今が景気の絶頂期? 狐にバカされた気分である。去年(暦年)の日本経済の成長率は3.6%で、米国の2.4%、ドイツの1.4%を抜いて主要7カ国のトップだという。また景気拡大は平成5年11月から42カ月も続き、史上3番目の長さだそうだ。
 圧倒的な多数派である中小企業と勤労国民の「現実を反映しないエコノミストの行う観察は一体『学』と呼べるのであろうか。ましてや、この問題について『経済学』は科学たり得ているであろうか。不思議でならない」((株)パワープランニング社長 渡辺剛博)。中小企業家の悲痛な告発である。
 大蔵省は最近、別掲「景気判断:累積表」を発表した。この表は累積表であるから景況判断の水準を表しており、財務内容に反映するものである。中小企業(資本金1千万円以上1億円未満)は、この調査始まって以来、水面上に顔を出したことはほとんどなく、平成3年以降は6年間もマイナス累積(財務内容の悪化)を強いられている。
 これは真理であり、まさしく「学」といえよう。官庁エコノミストはこうした現実を承知のうえで、少数派(大企業)のために中小企業にガマンを求めているのである。「よき社会」(good society)のありようを追求する経世済民の科学は、盲目的な価値法則(市場の失敗と言い換えてもよい)にルールを与える「学」であり、真理は多数派である主権者の選択を通じて実現されるものである。