会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2001年01月発行 第81号 DDKだより

巻頭言:米国と日本政府の協調で不況はさらに強まる

顧問  岩井 義照       
   祝経営研究所所長

 

 正月友人たちに会うと「景気はいつ回復するのか」という質問を受けた。「これから本当の不況が来る」と答えると驚いて「政府も新聞でも底を打ったと言っているじゃあないか」という。「政府や大新聞が不況が来ると言えば、それこそ大不況が来てしまう。底を打ったとしか言いようがないんだ」と説明してもまだ納得しない人が多い。
 しかしここにきて株が急激に下がり、大幅な円安が始まり不安が急速に広まっている。株の値下がりと円安は連動している。日本経済の先行きに不安を感じれば当然株は売られて値下がりする。売った金はその多くがドルを買ってアメリカの株投資に向けられるから当然ドル高(円安)になる。いまアメリカ経済もバブルを抱えて下落している。株の暴落は国債の暴落を生み、ドル暴落に連動する。最悪の場合、ドルの基軸通貨の地位を失う恐れがある。アメリカとしてはこれだけはどんなことをしても防がなければならない。日本に投資している投資資金を引き揚げ、日本株を暴落させる。当然他国の投資家も売り急ぎアメリカ株に投資する。アメリカの株価は回復し、企業業績も回復する。
 日本政府はこの作為的な円安(株価安)を「静観する」と発表している。アメリカに従属し、かつ輸出中心の大企業を支援するためである。しかし、急激な円安は輸入物価の高騰を生み消費者物価を値上げさせる。また株安は銀行、生保などの含み損失を増大させ、再び金融不安を生む。貸出しはストップされ、貸し渋りは更に強行され、企業の資金繰りは更に悪化する。政府は赤字国債をたれ流して目先の対策を取るにすぎない。しかし地方を含めた借金残高は660兆(2001年度末)に達し、既に元利金も絶対払えない不良債権化している。政府の意図するのは4倍以上のインフレ(大幅な円安・消費者物価値上げ)である。景気は間違いなく大不況に向かっている。
 私がくり返し述べてきた危機管理の対策を強めて欲しい。