年金改革のあらまし
 
先の国会では、さんざん物議をかもしながら、年金制度が大きく変わる法律が成立しました。具体的にはどのように変わるのでしょう?
今月の相談員
社会保険労務士 栗原淑江
 
今回の年金改正は、予想以上に進行する少子高齢化に対応し、「持続可能な制度」とすることを名目として、「負担と給付のバランス」を見直したもの。平たく言えば、保険料を徐々に引き上げながら、給付の抑制をはかるものです。今秋から2008年(平成20年)にかけて実施されていきますので、順次説明していくとして、今回はそのあらましと、当面、会社に関わりの深い点についてのみ。
1. 年金保険料の引き上げ
@ 月給・賞与にかかる厚生年金保険料(現行13.58%=労使折半=以下同様)を今年10月から毎年0.354%ずつ引き上げ、2017年度に18.30%で固定する。
A 国民年金保険料(現在1万3300円)を来年4月から毎年280円*引き上げ、2017年度以降は1万6900円*で固定する(*賃金上昇率による変動あり)。
2. 「マクロ経済スライド」の導入
 従来、年金額は現役世代の平均賃金や物価上昇率に照らして決定・変更していましたが、これに公的年金被保険者数の減少や平均余命の伸びを勘案した一定率を反映させ、給付額の抑制を図る(新規裁定者は10月から。すでに受給している人は、来年4月の変更から。2023年度まで続く見込み)。
3.働く高齢者の年金の見直し
@ 60歳〜64歳の在職老齢年金の年金額一律2割カットを廃止(05年4月から)
A 65歳以降の老齢厚生年金の繰り下げ制度を導入(07年4月から)。
B 70歳以上の働く高齢者にも、60代後半の在職老齢年金のしくみを導入し、年金を給与に応じて減額する(07年4月から)。保険料負担はなし。
4.育児休業中の保険料免除を子どもが満3歳になるまで延長(05年4月)
5.第3号被保険者の特例届出制度の導入(05年4月)
 サラリーマンの妻など被扶養配偶者は、保険料は納めなくてもよいのですが、届出をしないと第3号被保険者として認められません。来年3月以前の未届け期間がすべて特例的に救済されます。届出してあるか不安な人は、今のうちに調べておくとよいでしょう。