参与 田口 良一 祝経営研究所次長 最近の主な論文 「昔サラ金、いま国金」 (「別冊宝島」249号) 「『最低資本金』1千万円の無明」 (「世界」1996年5月号)
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@全国銀行協会の岸会長(東京三菱銀行頭取)は、
2月17日の記者会見で、公的資金注入について、
全銀協会長としては歓迎しながら、東京三菱頭取としては
「来期以降(高配当などが)経費の負担になるのは、できれば避けたい」と
言明しました。(日経2月18日)。 Aこれには少し解説が必要です。東京三菱は、 株価も銀行の中ではトップ。名実ともに日本のトップバンクです。 政府・自民党は、17兆円の公的支援のために、「大手の優良銀行に 資本を注入すれば、ほかの(優良でない)銀行も対象にしやすい」と いうことで、東京三菱に対しても昨年12月頃から水面下で根回しを してきたものです。 東京三菱側は、一旦は応諾したと報じられたこともありましたが (1月14日付日経)、今回は「決めたわけではない」といいながらも 公式に消極的見解を示したのですから、わかりにくい話です。 B東京三菱の本音は、自己資本比率8%以上という「早期是正措置」を クリアーするためには、自己資本比率の分子である自己資本を 増やすのではなく、分母である総資産(貸付金が主体)を圧縮する方針だ というのです。更に解説すれば、自己資本8%以上というのは、 日本版ビックバンの決勝戦のスタートラインでしかなく、 真のゴールはROE(株主資本利益率)を欧米銀行なみに引き上げること なのです。このゴールに到達できるのは大手(19行)でも数行だけだろうと いわれています。 Cこの本音をかくした発言だったため、岸会見は一見矛盾しているように 聞こえるだけです。優良顧客に絞り込む、資産スリム化競争 (選別強化・貸し渋り競争)が、4月以降一段とはげしくなることを 言外ににじませたものでした。 この公的資金注入問題の結末は、自民党の意向を汲んで 東京三菱以下すべての都市銀行が受け入れることになるでしょう。 しかし、前述の決勝戦が変更されることはありません。 日本版ビックバンはこれからが本番です。 こうした巨大・強力な世界に雄飛する銀行の創出の道程が、 すなわち中小企業を排除、淘汰する道程でもあるわけです。 中小企業は、ネットワークを緊密にして地域、中小企業を大切にする 金融機関を生み出す必要があります。 更にはそれを義務づける法制化が求められています。 |