参与 田口 良一 祝経営研究所次長 最近の主な論文 「借入金の金利交渉を見直そう」 (「企業実務」1998年2月号) 「『貸し渋り』はなぜ起きたか」 (「世界」1998年5月号)
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旧住専会社7社の債権回収を進めている住宅金融債権管理機構は、先ごろ、
住友銀行を相手どって損害賠償を求める訴訟を起こしました。その後さらに、
預金保険機構も住管機構を支援するため、この訴訟に補助参加しました。 新聞報道では、旧住専2社に紹介した3件、48億円余とされていますが、 住管機構の中坊社長(元日本弁護士会連合会会長)の後日の説明によると、 住友との訴訟は氷山の一角でしかありません。 銀行が「融資媒介契約」を利用して、自分では貸すことがはばかられる案件 や、自行貸付金の肩代わりを住専に押しつけたのですが、こうした違法性の 濃い案件が11銀行134件も認められ、そのうち住友銀行1行だけで72件 もあるというのです。 これらのこげつき債権の処理をめぐって、住友銀行とはヒアリングをくり かえしたけれども、住友側が責任を拒否したため今回の訴訟になったとのことで す。 この事件自体は、国民負担6,850億円を投入した住専問題の後始末であり 、古い事件ではありますが、その持っている意味はすぐれて現在的です。 銀行は、連帯して信用秩序(決済システム)を守る責任を負っている社会の 公器です。従ってそれにふさわしい企業倫理が求められているのです。世界の 基準(資本主義世界のルール)に照らせば明白な違法行為なのに、日本国内に それを取締まる法律(貸し手責任法)が欠如していることに便乗して、法律に 抵触しなければ何をやってもかまわないという日本の銀行業界全体の堕落が裁 かれているのです。 この裁判の帰趨は現在進行中のブリッジバンク方式による銀行整理(救済) のモラルハザード性をもあぶり出さずにおきません。同時にこの裁判が勝利す るならば、貸し手責任法なしの日本版金融ビッグバンが、銀行経営者堕落の歯 止めをはずし、消費者と中小企業が受ける甚大な災厄の危険を知らせる警鐘と なるものです。 ※モラルハザード……倫理感の欠如 |