「商工ローン」のかくれた共犯者

  参与  田口 良一       
     国民金融公庫出身
     祝経営研究所次長

 


 日栄や商工ファンドによる「商工ローン」が社会問題となっています。そしてこれらの高利業者に資金を流し続けている金融機関と、取り締まりを放置してきた監督官庁(大蔵省、現在は金融監督庁)に対する非難も高まっています。
 ところで、高利商工ローンがかくも隆盛をきわめることに手を貸しているのは、銀行と監督庁だけではありません。外側からは見えないけれど、高利業者を陰で支えている1人に信用情報会社があります。
 日栄や商工ファンドは事業資金を貸すというのに、銀行や保証協会のような審査を行っている形跡はありません。でも、調査は実施しているのです。例えば、日栄の場合、コスモスリストとかコンパスリストと呼ぶ調査リストを外注し、このリストだけをたよりにくりかえしくりかえし営業活動を展開しています。とび込み営業はとっくの昔に中止しています。
 資金は銀行や証券会社から、企業格付情報は商工リサーチや帝国データバンクから供給されていて、このいずれかを欠いても日栄の営業活動は成り立たないのです。
 こうした、いわば作為による共同正犯の他に、不作為によって支援している者もいます。それは国民生活金融公庫(注)です。国民公庫は、98年度の事業資金貸付を7,000億円も使い残してしまいました。公庫総裁・尾崎護氏(元大蔵事務次官)は「これ以上の融資は、技術上も物理的にも無理だ」といって残してしまったのです。
 国民公庫は、銀行貸し渋りに立ち向かって最後の受け皿として責任を果たすべきだったのに、資金供給のバルブの栓を締め続け、日栄や商工ファンドが獲物を狙う暴力・野蛮の広野に中小企業家を追い込んだといわなければなりません。
 使い残し7,000億円には、無担保・無保証人制度のマル経貸付の使い残し分2,670億円も含まれます。1件平均1,000 万円とすれば、26,000社への融資が実施できたはずで、災害貸付に準じて、保証協会の特別保証制度なみの基準にすれば実施は可能だったのです。国民公庫の不作為責任が問われるべきです。
 (注)国民金融公庫は10月1日から国民生活金融公庫と名称を変えた