岩井 義照 祝経営研究所所長
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4月1日から定期預金のペイオフが実施され、中小金融機関でその直前まで大変な混乱が続いた。金融機関の情報公開をせずにペイオフを実施した国を私は知らない。大混乱がおこるのは当り前である。本来ペイオフ実施にあたっては政府はすべての金融機関の詳細な情報を公開する。これに異議があれば金融機関も独自の情報を公開し、預金者の判断を仰ぐ。余りにも当り前のことである。これ程無責任な政府があるだろうか。 日本国民の金融資産1,400兆円(借入を差引いた実質は約700兆円)といわれるが、実は大変な格差があり50億、100億円を持つ大金持と殆んど預金を持たない膨大な庶民に分かれる。これら大金持は混乱し、下ろした定期預金を野村の投資信託や東京三菱の個人資産運用に持ち込む。この金が3月末から低迷しているアメリカや日本の株式市場に投資され始めた。実態は明らかにされていないが、これこそアメリカと日本の株価上昇の真相である。 ブッシュ大統領は高らかにアメリカ経済の力強い回復を宣言し、日本政府は3月危機の回避と、景気の底入れ宣言を行ったカラクリはこれにすぎない。日本政府がG7で唯一具体的に公約したのは、株価回復のため2兆円の政府資金を投入するということである。仮に国民の金融資産の10分の1、70兆が市場に投資されれば株価が回復するのは当然のことである。 しかしこれは景気回復とはなんら関係ない。最終的には国民の金融資産がアメリカに盗まれるだけのことである。更にアメリカは日本の金融機関の不良債権処理を急がせ、日本から取得したこの金で日本の不良債権資産を買い漁っている。ブッシュ大統領は小泉首相への親書で公然と「不良資産が速やかに市場に売却されることを望む」と強要し、恐ろしいことに小泉首相は協力を誓っている。これがアメリカ政財界の本音であり正に禿鷹戦略である。 「ザ外資」の著者、高杉良氏は竹中経済相を「売国奴」と指摘したが、小泉首相ほどこの言葉が相応しい首相はいない。 |